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神戸地方裁判所 昭和36年(ワ)548号 判決 1966年12月24日

原告 細木栄二 外一名

被告 川崎重工業株式会社

主文

原告等の本件各請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立

一、原告両名

(1)、被告が昭和三六年六月二〇日付で原告細木栄二に対し、同月二一日付で原告板倉叶に対し、それぞれ為した懲戒譴責処分が無効であることを確認する。

(2)、被告は原告両名の労働者名簿の賞罰欄に記入されている前項記載の懲戒譴責処分に関する事項をそれぞれ抹消し、社報に右処分が無効である旨を公示せよ。

(3)、訴訟費用は被告の負担とする。

(予備的申立)

(1)、被告は昭和三六年六月二〇日付原告細木栄二に対し、同月二一日付原告板倉叶に対し、それぞれ為した懲戒譴責処分が誤まりであるから原告両名に謝罪する旨を社報に一回通常の様式により掲載せよ。

(2)、被告は原告両名の労働者名簿の賞罰欄に記入されている前項記載の懲戒譴責処分に関する事項をそれぞれ抹消せよ。

(3)、訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

(本案前の申立)

(1)、本件訴を却下する。

(2)、訴訟費用は原告の負担とする。

(本案に対する申立)

主文第一項同旨。

第二、請求原因

一、原告両名は被告会社の従業員であるが、被告は、昭和三六年六月二〇日原告細木に対し、同原告が職場において所属課長の承認を受けずに、二回に亘り「運輸ニユース」を発行配布した行為が、被告会社の就業規則第七二条第三号に該当するとの理由で、同月二一日原告板倉に対し、同原告が職場において所属課長の承認を受けずに数回に亘り「電熔ニユース」を発行配布し、「川造映サニユース」を配布し、「安全対策のためのアンケート」を作成配布した各行為が、同規則第七二条第二号、第三号に該当するとの理由で、それぞれ懲戒譴責処分を為した。

二、原告細木は、造船部船殻課鉄木運輸係に勤務し、全日本造船労働組合川崎造船分会の右運輸係の常任職場委員(職場組合員約一三〇名中から選出された三名の職場委員のうち一名が常任となる)であるが、昭和三五年八月全造船第二一回定期大会において討議された職場新聞の育成強化の運動方針に基づき、他の職場委員と協議の上、「運輸ニユース」発行を企画し、昭和三六年一月に第一号、同年三月に第二号を発行し、職場組合員に配布したものであり、原告板倉は、造船部船殻課熔接鋏鋲係の電気熔接職場の職場委員(職場組合員約二三〇名中から選出された五名の職場委員のうちの一人)であり、かつ造船部船殻の安全委員であるが、(イ)、昭和三五年から職場委員協議の上、「電熔ニユース」発行を企画し、職場組合員に配布しており、(ロ)、被告会社従業員の有志により組織されている川造映サグループの運営委員会の委員をしている関係で、同原告は右委員会発行の「川造映サニユース」を自己の職場の有志に配布しており、(ハ)、安全委員として職場の安全の状態を調査するため、昭和三六年三月「安全対策のためのアンケート」を作成配布したものである。

三、しかし、本件懲戒譴責処分は、以下の理由により無効である。

(1)、就業規則解釈の誤り

被告は、原告両名の前記各文書の配布が文書掲示手続規程に違反するから就業規則第七二条第三号の「屡々規則に違反し会社の風紀秩序を紊したとき」に該当するというが、原告両名は右配布にあたり所属課長の承認を受けなかつたことは認めるけれども、本件職場新聞等は前記経緯により発行配布され、而も全日本造船労働組合川崎造船分会事務所の書記長に事前連絡して為されているから、実質上組合文書に該るものであり、かかる文書については、そもそも文書掲示手続規程上その適用を除外されるものであるので(同規程第九条、第三条)、なんら規則に違反していない。

また被告は、原告板倉の前記文書配布につき就業規則第七二条第二号の「勤務に関する手続その他の届出を詐つたとき」にも該当するというが、文書配布にあたり所属課長の承認を受けなかつたことをもつて、右場合に該るものと解することは、解釈上明らかな誤まりである。

(2)、労働基準法第三四条第三項違反

かりに前記各文書の配布が形式上文書掲示手続規程に違反するものとしても、原告両名はいずれも休憩時間中に配布したものであつて、右時間中の配布は本来全く任意自由に為しうるところであり、同規程がこれを制限するとすれば労働基準法第三四条第三項に違反するものといわねばならない。休憩時間は、労働者が使用者の経営指揮から離れ、支配従属から解放され、人間性ないし人間性を復活することが権利として認められた時間であるから、休憩時間の自由利用は奪い得ない労働者の権利であつて、使用者は右時間中「事業場の規律保持上必要な制限」を為しうるにすぎず、しかも右制限は建物設備等の維持保全及び休憩設備の管理に必要な限度にとどまるものである、したがつて前記各文書を休憩時間中配布する行為は、組合活動か否かを問わず自由である。

(3)、不当労働行為

原告両名が前記各文書を配布した行為は、前記二、の事実に徴して実質的には正当な組合活動にほかならないものであるから、本件譴責処分は、原告両名の組合活動に対する不利益取扱である。

四、本件譴責処分の無効確認を求める利益

(1)、被告会社の懲戒には、譴責、出勤停止及び解雇の三種が定められているが(就業規則第七一条)、右懲戒は、使用者が経営の秩序維持のため労働者に対して科する制裁であり、いわば企業内の刑罰である。したがつて、労働保護法上の制約があることはいうまでもないが、さらに罪刑法定主義的保障を受けて、労働者は就業規則に定められた懲戒事由に該当する行為をしないかぎり、使用者より懲戒処分という身分的、経済的不利益又は精神的苦痛を受けない雇傭関係上の法的地位ないし利益を有する。

(2)、懲戒には、事実行為としての側面が存するが、それは懲戒権行使の執行的段階(解雇の場合は、賃金等給与の精算、貸与物品の返納、労働者名簿の処理等の手続的事務の執行、あるいは就労阻止があり、出勤停止の場合は、賃金カツト、就労阻止等があり、譴責の場合は、労働者名簿への記入、公示等がある)を把えて称するのであつて、その前提である懲戒の通告行為は、単なる事実行為ではなく、それは使用者が労働者に対して就業規則所定の懲戒をする旨の一方的意思表示である。譴責の場合は、通告と執行が同一機会に為されることが多いけれども、そのことをもつて、譴責が事実行為にすぎないと解することはできない。

(3)、譴責が懲戒処分である限り、叱責、注意とは質的に異り、同処分を受けると、その旨労働者名簿に記入され、かつ企業内一般に公示され、あるいは公示がなくとも秘密裡に行うものでないから他に知れわたる事態をまねくことにより、いわば前科者扱いをされ、その結果労働者の蒙る勤務上の不信用及び精神的、人格的不利益は甚大である。それは単なる事実上の不利益又は危険ではなく、懲戒譴責それ自体に内在し、当然発生する権利侵害である。

(4)、その他譴責の通告が意思表示としての性格を具有することは、次の諸点からも明白である。(イ)、譴責処分は、始末書を提出せしめ将来を戒める(就業規則第七一条第一号)ものであるから、同処分の直接の効果として被処分者において始末書の作成、提出義務を生ずる。(ロ)、昇給調査期間中に譴責に処せられると、昇給額を減額し、または昇給を行わないことがある(賃金規則第二八条)。(ハ)、数回譴責を受けたにも拘らず改悛の見込みがないときは解雇又は出勤停止に処せられる(就業規則第七三条第八号)。

(5)、ところで原告両名は、本件譴責処分のため昭和三七年四月一日付定期昇給の際に不利益取扱を受けるにいたつた。右昇給通知額は、(イ)、原告細木において、本給(日給)金一四一円四〇銭(旧金一三七円一〇銭、増額高金四円三〇銭)、職能給(日額)金八〇八円三〇銭(旧金七九〇円七〇銭、増額高金一七円六〇銭)、(ロ)、原告板倉において、本給(日給)金九八円九〇銭(旧金九五円七〇銭、増額高金三円二〇銭)、職能給(日額)金六七二円九〇銭(旧金六五二円二〇銭、増額高金二〇円七〇銭)であつたが、当時の工員の昇給率は、本給平均四・九%、職能給平均五%と決められていたから、同率により算出すると、(イ)、原告細木の場合は、本給増額金六円七二銭、職能給増額金三九円五四銭、(ロ)、原告板倉の場合は、本給増額金四円六九銭、職能給増額金三二円六一銭、の昇給分があるべきはずである。そして、かような減額昇給が行われるのは、欠勤日数が三〇日を超えた者及び懲戒処分を受けた者のある場合にかぎられ、当時原告両名は欠勤したことがないから、本件譴責処分を受けたこと以外に減額昇給の理由を見出すことができない。

五、叙上の理由により、本件譴責処分は無効とされなければならないが、そうなると被告が労働者名簿に記入した同処分に関する事項は、当然に抹消されなければならない。すなわち、被告会社は、労働者名簿の調製、記入の法的義務があり(労働基準法第一〇七条第一項)、同名簿の記入事項に変更があつた場合には、遅滞なく、これを訂正すべき義務があるところ(同条第二項)、原告両名の各労働者名簿の賞罰事項欄には、本件譴責処分に関する事項の記入が為されているので、本件譴責処分が無効であるからには、被告は同処分に関する事項の記入を抹消すべき義務がある。

また、本件譴責処分は、就業規則第七〇条第三項により会社の発行する社報による公示を受け、これにより原告両名は、従業員としての人格、名誉が毀損せられたので、同処分が無効であることについても、同様に社報による公示が為されて然るべきであり、被告には右旨を公示すべき義務がある。

六、予備的申立の請求原因

かりに、本件譴責処分が、権利又は法律関係に属しない事実行為にすぎず、その無効確認を求める利益を有しないとしても前叙一、ないし三、記載の事実関係に徴して明らかなように、本件譴責処分は被告の故意又は過失に基づく不法行為というべきであるから、同処分により著しい精神的不利益を蒙つた原告両名は、その損害賠償請求として被告に対し右精神的慰藉のため最小限度必要な「本件譴責処分が誤りであるから謝罪する旨を社報に一回掲載すべき」ことを求めると共に、同処分が違法であるからには前記五に述べたごとく、被告は原告両名の各労働者名簿に記入された右処分に関する事項を抹消すべき義務があるので、右義務の履行を求める。

第三、被告の本案前の主張

一、本件譴責処分無効確認の訴は司法裁判権の対象とならない。すなわち、譴責処分は、企業内部における自律的法規範としての就業規則に基づき、企業秩序を自治的に維持するためにする行為であるから、単なる内部規律の問題として自治的に処理されるべきものであり、国家法の評価、介入を受けるべきものではない。したがつて、本件訴は、裁判所の権限に属しない事項を目的とする訴で不適法である。

二、本件訴は、権利又は法律関係に属しない単なる過去の事実関係につき確認を求めることに帰するから、不適法である。

譴責処分は、企業秩序ないし規律背反者に対し、その非を諭して反省を促し将来を戒める単なる事実行為であつて、それ自体意思表示ないし法律行為に該当しないことは勿論、なんら直接に雇用関係上の権利の設定、変更、消滅に影響があるものではない。

(1)、原告等は、譴責処分の通告と執行とを分けて、右通告は法律行為に該当する旨論ずるが、譴責処分は、被処分者にその非を諭して反省を促し将来を戒める通告が為されることにより、すべて完了するのであつて、その後における公示及び労働者名簿への記入等は、爾後の事務処理にすぎず、執行の観念を容れる余地はない。したがつて、譴責処分は単なる事実上の作用しか齎らさないものである。

(2)、譴責処分は始末書を提出せしめるが(就業規則第七一条第一号)、右始末書提出は、被処分者の改悛反省の端緒をつくるために求めるのであり、同処分の直接の法律効果として始末書の提出義務が生ずるのではない。したがつて、被処分者が始末書の提出を拒んだ場合には、同人が改悛反省していないものとみなされるが、右不提出自体を義務違反として、さらに懲戒処分を行うことはないから、右点に関する原告等の主張は失当である。

(3)、原告等は譴責処分が昇給の停止或は減額の事由となり、不利益な効果を伴う旨主張するが、被告会社の賃金規則第二八条「昇給調査期間中に懲戒処分に処せられた者に対しては昇給額を減額し、また昇給を行わないことがある」旨の規定は単なる警告的な規定にすぎず、被告会社における昇給の実態は、所属長である課長、掛長、職長、組長が当該調査期間中(前年の三月一日から当年二月末日まで)における各人の勤務状況、作業実績、能力、将来性等あらゆる事項に亘り人事考課を行つた結果、各人別の昇給の有無及びその額を決定するのであり、譴責処分については、これを直接の理由として昇給、賞与が減額されることは有り得ず、ただ一般にそれが人事考課の評定要素と関係をもつ場合に、評定結果に影響を与えるにとどまるのであり、被処分者といえども、すでに反省し日常の勤務状況が良好であれば、一般従業員に比し高額な昇給が行われている場合が現実に存することに徴し、容易に窺知できるところである。したがつて、譴責処分と昇給の間には、法律要件対法律効果の法律関係が存在せず、さらに事実上の効果においても両者の間になんら相互関係があるとはいえない。

原告等は、本件譴責処分を受けた結果昭和三七年四月一日付定期昇給の際に不利益が生じた旨主張するが、原告等の昇給額が主張のとおりであること、被告会社は欠勤日数三〇日を超えた者及び懲戒処分を受けた者に対し原則として調整昇給をし、原告等が前者に該当しないことは、いずれもこれを認めるけれども、前叙のごとく人事考課制度に基づき、所属長が原告等の勤務状況等に対する総合的評価の結果、主張の昇給額を決定したのであつて、原告等が本件譴責処分を受けた事実も右評価にあたり考慮されたが、それのみによつて昇給額が決定されたものではないから、右昇給額をもつて本件譴責処分の法的効果として発生したものとすることはできない。

(4)、原告等は、本件譴責処分の法的効果として、勤務上の信用及び人格上の名誉が侵害された旨主張するが、右主張は過大誇張にすぎるばかりでなく、かかる抽象的な権利侵害性は法的効果ということができず、事実上の不利益ないし危険にすぎない。

第四、被告の本案の答弁及び主張

一、原告等主張の請求原因第一項の事実は、これを認める。

二、本件譴責処分の理由

(1)、原告細木は、昭和三六年一月以降、職場において二回に亘り「運輸ニユース」を発行配布し、原告板倉は、昭和三五年頃から、職場において屡々「電熔ニユース」「川造映サニユース」を発行配布し、また昭和三六年四月には、職場において「安全対策のためのアンケート」を作成配布したが、右各文書の配布はいずれも所定の手続を経ずに無断で為されたものである。

(2)、被告会社では、昭和三二年三月一日制定実施の「文書掲示手続規程」により、会社構内において掲示、配布、撒布しようとする一切の文書(但し業務文書を除く)については、その都度責任者を明記した原本及び文書掲示願を所管課長に提出し、事前に承認を受けなければならず(第四条)、同規程によらない文書の配布は禁止されている(第八条)。したがつて前記文書の配布が許されるためには、所管課長である造船工作部勤労課長に対し、事前に承認を求めるべきであつたのである。

(3)、しかして、原告等の右各文書配布行為は、被告会社就業規則第七二条第二号の「届出を詐つたとき」並びに同条第三号の「屡々規則に違反したとき」に該当することが明らかであり、加うるに、原告細木は、以前から屡々職場の規律を紊す行為がみられ、上長に対しても反抗的で、職場秩序を無視した不穏当な言動も多く、他に悪影響を与えており、また原告板倉は、昭和二八年八月社品を持出して保安課より注意を受け、さらに昭和三二年九月七日には怠業で始末書の提出を命ぜられる等、日常の勤務態度が不良であつたので、被告会社は右原告両名に対し、本来は出勤停止に処するべきであつたが、職場における文書配布に対する処分は初めての事例であつたので、今回は特に譴責という最も軽い処分により将来を戒めることを決定したのである。

(4)、なお被告会社は、本件譴責処分を決定する前の昭和三六年六月三日、従来の慣行に従い労働課長より原告等の所属する全造船労働組合川崎造船分会に対し、処分理由について説明を行つたところ、これに対し組合は、執行委員会を開き討議した結果、同月一七日仙波執行委員長より労働課長に対し、組合としては原告等の行為は組合活動ではなく、かつ就業規則の懲戒条項に該当することを認めるが、出来るだけ穏便な処分に付されたい旨の回答があつた。

(5)、前記決定に基づき、六月二〇日原告細木の所属長である造船工作部船殻課鉄木運輸掛長富田慶喜は、造船工作部事務所に同原告を呼び、口頭で処分理由を説明して譴責処分に付す旨申渡し、今後注意されたき旨の訓戒を与えると共に、規則に基づき翌二一日迄に始末書の提出方を求めたところ、同原告は右処分は不当である旨抗議し、始末書については後日回答する旨述べて退出した。一方原告板倉についても、六月二一日同原告の所属長たる造船工作部船殻課熔接鋏鋲掛長寺井清は、同原告を造船工作部事務所に呼び、前記細木の場合と同様の態様をもつて譴責処分に付する旨申渡し、始末書の提出を求めたが、同原告は理由の説明を聞いた後そのまゝ退去した。数日後、原告等は右両掛長に始末書を提出したが、同始末書には前記文書の配布事実を承認する旨記載したほか、本件処分が不当である旨記載されていたので、右両掛長はその受理を拒み、書き直すよう返戻したところ、そのまゝになり現在にいたつている。

三、前記各文書は、前示「文書掲示手続規程」第九条に定める「労働組合の掲示文書」として特別の取扱いを受ける文書に該らない。すなわち、右「労働組合の掲示文書」は、労使の話し合いにより組合の正規の機関で決められた文書であつて、かつ組合の責任者の署名のあるものとすること、具体的には川崎造船分会発行の機関紙及び指示、指令、組合ニユースに限るものとすることにつき、労使間に合意が成立していたのであり、したがつて、一般的に組合活動のための文書であつても、右の要件を欠くものは「労働組合の掲示文書」に該当せず、その配布掲示にあたつては、一般の掲示文書と同様に前示規程に定める手続をふまなければならず、これを本件「運輸ニユース」「電熔ニユース」についてみると、かりに右各文書が組合活動のための文書であつたとしても、それが前示要件を欠く文書であることは前記(4)の事実に徴して明らかであり、また本件「安全対策のためのアンケート」については、これが原告板倉の判断で組合と無関係に配布されたものであることは後記四、(2)、のとおりであり、さらに本件「川造映サニユース」については、これが組合活動とは無縁な文書であることは後記四、(3)、のとおり自明であるから、かような本件各文書の配布行為は、いずれにしても、「文書掲示手続規程」第九条に違反するものといわなければならない。

四、本件各文書の配布行為は、正当な組合活動としての性質を有しない。

(1)、原告等は、職場新聞の発行は全日本造船労働組合の第二一回定期大会における運動方針であり、本件「運輸ニユース」「電熔ニユース」は右方針に基づき、職場委員と協議のうえ発行したものである旨主張するが、右運動方針はあくまでも加盟組合に対する一般的指針にすぎず、右方針を具体化するためには各分会の正式機関の決定によるべきものであるところ、原告等の所属する川崎造船分会においては、定期大会はもとより、委員総会、執行委員会においても、職場委員が随意に職場新聞を発行することを承認する旨の決定は為されていないから、本件ニユースは一部同志の企画による個人的な新聞にすぎない。この事実は、同ニユースの内容が執行部批判等の記事を掲載していることからも窺い知ることができる。なお本件「電熔ニユース」第一ないし第五号は、前記運動方針が前示大会で採択された昭和三五年八月より以前である昭和三五年七月二六日までに、すでに発行されていたものである。

(2)、本件「安全対策のためのアンケート」は、当時組合の安全委員であつた原告板倉の個人的発意に基づく文書であつて、組合の正規の文書ではない。このことは、右アンケート配布の翌日、川崎造船分会安全対策部長石田寿太郎名義で、同アンケートは組合と無関係であり、板倉が独自の判断で分会名を使用したものであるから、無記入のまま返却してほしい旨のことが、職場に掲示された事実に徴して明らかである。

(3)、本件「川造映サニユース」については、原告等において自認しているごとく映画サークルの機関紙であり、組合とは全く無関係なものであるから、その配布が組合活動となるいわれはない。

五、原告等は、休憩時間の使用は自由であるとし、右時間中の文書配布に対する制限は、労働基準法第三四条第三項に違反し無効である旨主張するが、かりに原告等の本件文書配布行為がすべて休憩時間中であつたとしても、そのために原告等の右行為が正当とされることはない。なるほど労働基準法第三四条第三項は、「使用者は第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない」と規定しているが、本来休憩時間は労働者の疲労を回復させることを目的とするものであるから、その目的を害せず、かつその利用について事業場の規律保持上の必要がある場合は、右に相当する限度において一定の制限を加えることは、なんらその利用の自由を害するものではない。会社は、職場の秩序を維持し、環境を整備する業務上の必要の限度において、施設管理権ないし人事権に基づいて、従業員の行動に関し所要の制限を行いうるのであり、したがつて、社内における文書活動を無制限に放任するときは、或いは会社の施設を汚損し、或いは工場内の秩序を紊乱し、ひいては生産に支障を生ずるおそれがあるので、就業時間中であると否とにかかわらず、社内における文書の配布について一定の手続を定め、これに従わせることは、休憩時間中の自由を害するものではなく、労働基準法第三四条第三項の趣旨に違反する点は存在しない。

六、原告等の予備的請求に対する答弁

原告等は、本件譴責処分は不法行為である旨主張するが、前叙諸事実に徴し、同処分が法規違反、公序良俗違反、権利濫用のいずれにも該当しないことが明白であるから、右主張は理由がない。また原告等は、同処分のため著しい精神的不利益を蒙つた旨主張するが、単に相手方の非を諭し、将来を戒める程度の行為により精神的不利益が現実に生ずるものかどうか疑わしい。かりに精神的な不快感が生ずるとしても、事実上軽微なものであり、かつ日常の社会生活上数多く存在する程度のものであるから、不法行為による救済に適しないものといわなければならない。

第五、被告の主張に対する原告等の答弁

被告主張事実中、二の(1)、(5)の各事実は認め、同(2)の事実は不知、その余の事実は争う。

第六、証拠<省略>

理由

第一、本件譴責処分の無効確認請求等について

一、原告等主張の請求原因第一項の事実(本件各譴責処分の存在)、昭和三六年六月二〇日造船工作部船殻課鉄木運輸掛長富田慶喜が、原告細木を造船工作部事務所に呼び、口頭で処分理由を説明して、本件譴責処分に付する旨申渡したこと、同年同月二一日同部同課熔接鋏鋲掛長寺井清が、原告板倉を前記事務所に呼び、前記細木の場合と同様の方法により、本件譴責処分に付する旨申渡したことは、いずれも当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一号証(就業規則)によると、被告会社の懲戒処分には、譴責、出勤停止及び懲戒解雇の三種があり、譴責は始末書を提出せしめて将来を戒めるものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

二、そこで、本件譴責処分の無効確認請求が許されるかどうかにつき判断するに、本件譴責処分の性質が事実行為であるか、あるいは法律行為であるかの点の検討はともかくとして、そのいずれにせよ、それが使用者が従業員に対して為す懲戒処分として、従業員の意に反する処分であるからには、該処分を受けることにより直接に従業員の具体的な権利ないし利益が侵害される場合においては、右救済を求めて裁判所に対し、同処分の無効確認を求めることができるものと解するを相当とするところ(したがつて、本件譴責処分が企業内における自治的処理の問題として、司法裁判権の対象にならないとする被告の主張は、もとより失当である)、

(1)  本件譴責処分の存在が、原告等の昇給の停止又は減額の事由に該るかどうかを検討するに、成立に争いのない甲第六号証、証人中田俊一の証言(第一回)によれば、被告会社における従業員の昇給の実態は、職務分類制(下位の一級から上位の五級までの五段階に従業員を分類する)を前提として、当該従業員の所属長(課長、掛長、職長、組長)が当該調査期間中(前年の三月一日から当年二月末日まで)における各人の勤務成績評定、能力評定及び人物評定等の人事考課を、総合的に評価、裁量したうえで、各人別の昇給の有無及びその額を決定しており、したがつて譴責処分を受けたこと自体は、右人事考課における独立の評定事項を構成しているものではないので、直接に右昇給額決定に関係することはないけれども、当該譴責処分の対象となつた事由の具体的内容如何により、それが前示人事考課の評定要素と関連がある場合には、その限度において当然に考慮されるわけであるから、その結果前示総合的評価に対し間接的に影響を与えることがあるので、被告会社では、右趣旨を賃金規則第二八条において、「昇給調査期間中に懲戒処分に処せられた者に対しては、昇給額を減額し、又は昇給を行わないことがある」旨規定することにより、一般従業員に対し懲戒処分に処せられた場合に起り得る間接的ないし事実上の不利益につき警告していることが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。しかして右事実に徴すると、本件譴責処分は、その処分の対象となつた本件各文書の無承認配布行為が、人事考課のなんらかの評定要素に関係づけられて評価されたとしても、人事考課の総合的評価、裁量にあたり、それは単なる一つの資料にとゞまり、昇給額の決定に対しては、間接的ないし事実上の影響を与えるにすぎないものであつて、特段の事情の存在につき主張立証のない本件においては、本件譴責処分の存在が原告等の昇給額の決定に対し直接的影響を与えたものということはできない。

(2)  もつとも原告等は、本件譴責処分を受けた結果昭和三七年四月一日付定期昇給の際に具体的な不利益が生じた旨主張するので、この点を検討するに、右定期昇給の際の原告等の各昇給額が、請求原因の四、(5)、記載のとおりであること、原告等が本件譴責処分を受けた理由により調整昇給対象者となつたことは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第七号証、証人中田俊一の証言(第一回)により真正に成立したものと認める乙第四号証の一ないし三、及び同証言によれば、当時工員の本給増加率は四・九%、職能給増加率は五・〇%であつたが、右は前示職務分類の五段階に亘る職級全体の平均値であるところ、原告両名は右職級の二級に該当するので、同級の場合は右各増加率より低いはずであり、しかもいずれも平均値であるから、当然に各人別の差があること、また被告会社における調整昇給の目的は、前示調査期間中に懲戒処分を受けた者及び欠勤日数が三〇日を超えた者を対象とするが、右該当者に対し、必らずしも昇給の停止又は減額を目的とするものでなく、普通昇給者と人事考課を別異にすることにより、所属長の評定の際の恣意を防止し、普通昇給者と調整昇給者の実質的公平を図ることを目的としており、したがつて一般的にみて前者に比して後者の平均昇給率が低下するのはやむを得ないが、調整対象者といえども、対象の理由となつた事由の具体的内容如何によつては、各人別にみると前示平均増加率以上に昇給している者が存在することが認められ、右認定に反する証人三木米道の証言、原告細木及び同板倉の各本人尋問の結果は措信できず、ほかに右認定を覆えすに足りる証拠はない。しかして右事実に前叙昇給実態を併せ考えると、原告等の前示昇給額が本件譴責処分を受けたため生じた結果であるとは、にわかに断ずることができない。

(3)  なお原告等は、本件譴責処分により始末書の提出義務が生じた旨主張するが、前顕中田証言によれば、被告会社における譴責処分は、被処分者を訓して将来を戒めることが目的であつて、始末書を提出させるのは被処分者の改悛していることのあらわれとして求めるだけで、改悛していない被処分者にも、強いて始末書を提出させることを目的とする趣旨でないことが認められ、右認定に反する証拠はないから、原告等に始末書を提出すべき義務はないといわなければならない。

(4)  また原告等は、本件譴責処分により精神的、人格的利益が害された旨主張するが、かゝる抽象的な、事実上の利益に対する侵害を根拠として、本件譴責処分の無効確認を求めることは許されないと解すべきであるから、右主張は失当である。

叙上の次第で、本件譴責処分を受けたことにより、現在原告等の具体的な権利ないし利益が直接に侵害されたことを認めることができず、ほかに侵害を蒙つた権利ないし利益の存在につき主張立証のない本件においては、原告等の本件譴責処分の無効確認請求は、その権利保護の資格を欠くものといわなければならないから、爾余の点の判断をするまでもなく、失当として、これを棄却すべきであり、また右無効確認を前提とする原告等の労働者名簿記入事項抹消請求も理由がないことに帰するから、これを棄却しなければならない。

第二、予備的請求としての謝罪請求等について

一、原告細木が職場において所属課長の承認を受けずに、二回に亘り「運輸ニユース」を発行配布したこと、原告板倉が、同じく職場において所属課長の承認を受けずに、数回に亘り「電熔ニユース」を発行配布し、「川造映サニユース」を配布し、「安全対策のためのアンケート」を作成配布したことは、既示のとおり当事者間に争いがないところ、原告両名の右各文書配布行為が、被告会社の就業規則の懲戒条項に該当するかどうかにつき争いがあるので、以下判断するに、

(1)  証人中田俊一の証言(第二回、昭和三九年九月一五日の分)及び同証言により真正に成立したものと認める乙第二号証によると被告会社では、昭和三二年三月一日制定し、同日より実施した「文書掲示手続規程」と称する規則により、会社構内において掲示、配布、撤布しようとする一切の文書(但し業務文書を除く)については、文書の内容において所定の制限を受ける(第三条)ほか、その都度責任者名を明記した原本及び文書掲示願を所管課長に提出し、事前に承認を受けなければならず(第四条)、同規程によらない文書の掲示等を禁止し(第八条)、但し、労働組合の掲示文書の取扱については、同規程にかかわらず、別に定める(第九条)等のことを規制しており、右規程の存在は周知のところであることが認められ、これに対し原告等において右規程の存在を知らなかつた旨述べる証人稲岡二郎、同高橋政治の各証言、原告細木の本人尋問の結果は、前顕証拠及び証人仙波佐市の証言に照して、たやすく措信できず、ほかに前示認定に反する証拠はない。

(2)  そこで、右規程においてその適用を受けないものとされている「労働組合の掲示文書」の範囲についてみると、前顕中田証言及び証人仙波佐市の証言によれば、それを特に書面をもつて規定するまでにはいたつていないが、従来労使間の話し合いにより相互に了解してきた「労働組合の掲示文書」とは、組合の正規の機関で決められた文書で、かつ組合の責任者の署名のあるものであり、具体的には、川崎造船分会発行の機関紙、指示、指令、組合ニユース等を指すものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

しかして右事実に徴して本件配布の各文書を検討すると、成立に争いのない甲第三号証の一ないし六によれば、「川造映サニユース」が組合と無関係で映画同好会の文書であることは明らかであり、成立に争いのない甲第一号証の一、二、同第二号証の一ないし四、同第四号証によれば、「運輸ニユース」「電熔ニユース」及び「安全対策のためのアンケート」は、いずれもその体裁及び内容よりみて、組合の正規の機関が発行、作成したものではなく、また組合の責任者の署名のあるものでもないことは明らかであるから、本件各文書はいずれも「労働組合の掲示文書」に該当せず、したがつて、前示文書掲示手続規程の適用を受けるものであり、配布行為の事前に所管課長の承認を受けるべきものであつたといわなければならない。

そうすると、原告両名の本件各文書配布行為は、被告会社における規則に違反したものであるというほかはなく、原告両名はいずれも、被告会社の就業規則(前顕乙第一号証)第七二条第三号の「屡々規則に違反したとき」に該当するものといわなければならない(なお、被告は原告板倉に対し、適条として同条号のほかに、同条第二号の「届出を詐つたとき」にも該当するとしているが、同号は文言上明らかなように、「届出がないのにこれある旨称して配布する」場合であり、本件の場合は前示認定のごとく単に「届出がない」だけの場合であるから、同号を本件の場合に適用することはできず、被告の右適条の点は誤まりである)。

二、原告等は、本件各文書配布行為は休憩時間中に為されたから右時間中の配布行為を就業規則に問うことは、労働基準法第三四条第三項違反である旨主張するが、本件全証拠によるも本件各文書の配布が休憩時間中に為されたことを認めることができない。のみならず、かりにそうだとしても、被告会社は、職場の秩序を維持し環境を整備するため、施設管理権及び人事権に基づいて、会社構内における従業員の行動に関し、必要限度の制限を行い得るのであり、前叙文書掲示手続規程に定められた手続の内容及び程度をもつて、従業員の会社構内における文書の配布等の行為を制限することは、前記見地より許容すべきところであり、これに対し従業員は、就業時間中であると否とにかかわらず、右規程の定められたところに従うべき義務があり、右制限は従業員の休憩時間中の自由を害するものとはいえず、労働基準法第三四条第三項の趣旨に反するものではないから、原告等の右主張は失当である。

三、また原告等は、本件各文書配布行為は実質的にみて組合活動であるから、これを懲戒譴責処分に付することは不当労働行為である旨主張するので、以下判断するに、

(1)  まず、「運輸ニユース」「電熔ニユース」について検討すると、成立に争いのない甲第五号証、同第一一号証、証人稲岡二郎、同高橋政治の各証言、原告両名の各本人尋問の結果によると、本件各文書配布当時、原告細木は造船部船殻課鉄木運輸係の職場委員、原告板倉は同部同課熔接鋏鋲係の職場委員であつたが、折から全日本造船労働組合では、組織強化のための教宣活動の一環として職場新聞を育成強化する運動方針を討議していた頃であつたので、右運動方針に基づき、原告両名は各自の職場において、他の職場委員とも協議のうえ、職場新聞の発行を企画し、原告板倉は昭和三五年初頃から数回に亘り「電熔ニユース」を発行(一回の発行部数約二五〇部)配布し、次いで原告細木が昭和三六年一月から二回に亘り「運輸ニユース」を発行(同部数約一五〇部)配布したものであることが認められるが、前顕甲第一号証の一、二、同第二号証の一ないし四によれば、右「電熔ニユース」「運輸ニユース」は、いずれもその記事の内容において、全日本造船労働組合川崎造船分会の執行部に対する批判の傾向が見受けられ、とくに「電熔ニユース」の第三、五、六の各号は、明らかに前記執行部の運動方針を非難、攻撃するものであることが認められ、そして証人仙波佐市の証言によれば、当時前記川崎造船分会は、全日本造船労働組合の定期大会において討議された職場新聞の育成強化の運動方針について、これを具体的に実施することは時期尚早であるとの態度を採つたこと、もとより職場委員には職場新聞発行を決定する権限がないこと、そして前記分会は、これまで原告両名の前記各ニユースの発行を承認したことはなく、かえつて原告両名の右行動は組合活動の統制を乱す行為であるとみており、被告会社より本件譴責処分について組合の意見を求められた際にも、右分会は、原告等の行動は組合活動ではないから文書掲示手続規程に違反し、就業規則の懲戒条項に該当するものであることを認めざるを得ないが、訓戒程度の処分にとどめてほしい旨回答していること、等の事実が認められ、叙上各認定に反する証拠はない。

しかして右事実に徴すると、本件「運輸ニユース」「電熔ニユース」は、前記川崎造船分会の組織強化のための教宣活動としての性格を有しないものであり、組合内部における正常な手続を経ずに発行配布されたものであるから、右各ニユースの発行配布行為が、形式上は勿論実質上においても、組合活動に該るものと評価することはできない。

(2)  つぎに、「安全対策のためのアンケート」について検討すると、前顕甲第四号証、証人仙波佐市の証言により真正に成立したものと認める乙第五号証、同証言、原告板倉の本人尋問の結果によれば、昭和三六年四月二四日頃原告板倉は、造船部船殻安全委員の名義により、船殻全組合員に対し、住居及び食費の状況、睡眠時間、通勤時間、安全訓、準備体操、月平均実働時間、時間外労働、余暇時間、労働と賃金と安全との関係等の事項についてアンケートを配布したが、右アンケートは組合の安全対策活動の一環として為されたものでなく、その内容において私的生活に関係する事項のあることから、組合員の間でも苦情が出る始末で、前記川崎造船分会は、同月二五日安全対策部長名義をもつて、右アンケートは組合と無関係である旨の掲示を為すにいたつたことが認められ、右認定を左右する証拠はなく、右事実に徴すると、本件「安全対策のためのアンケート」の作成配布行為が、組合活動に該るものということはとうていできない。

(3)  なお「川造映サニユース」については、これが組合と全然無関係な映画同好会の機関紙であることは、前示認定のとおりであるから、これを配布する行為が組合活動に該るものでないことはいうまでもない。

叙上の次第で、原告等の本件各文書配布行為は、いずれも実質的意味においても組合活動に該るものということができないから、この点に関する原告等の主張は理由がない。

四、そうすると、本件譴責処分には、前叙適条の一部誤まりを除いて、ほかに違法のかどは存在せず、しかも右適条の誤まりは軽微であるから、同処分の効力に影響を及ぼすものではないと解すべきであり、また本件においては、同処分が著るしく不当であることの事情の存在を認め難いから、原告等の本件譴責処分が違法行為に該ることを根拠とする本件謝罪請求等は、爾余の点を判断するまでもなく理由がない。

(結論)

よつて、原告等の本件各請求は、いずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山田常雄 谷口照雄 中山善房)

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